可搬型ボートの選択肢

可搬型ボートは車に積んだりトレーラーで牽引して様々な場所から出航できるボートです。必然的に小型のボートが中心になりますね。

可搬型ボートは素材による区分と、運搬法による区分があります。素材による区分はインフレータブルボート(いわゆるゴムボート)、FRPボートが中心で、プラスチック製や木製もあります。FRPとはFiber Reinforced Plasticの略で日本語に訳すと繊維強化プラスチックとなります。ガラス繊維などの繊維をプラスチックの中に入れて強度を向上 させた複合材料のことで自動車のバンパーなどにも使われ、プラスチックの欠点である強度と耐久性を飛躍的に高めた、ボートには理想の素材です。 運搬法別ではトレーラブルボート、カートップボートに加え、分割ボートや折り畳みボート、インフレータブルボートなど車のラゲッジスペースに車載可能なボートがあります。

もうひとつ重要なのは、操船に小型船舶操縦免許が必要か否かという問題です。現在の法律では、登録長が3メートル以下、船外機のパワーが約2馬力以下で操船免許が不要です。小型ボートはこの条件を計算して作られているものが多いのです。実際には実寸×0.9≒登録長になりますから、ボートの全長が3.33mくらいまでは免許不要で操船可能なサイズということになります。ただし、登録長3mを超えるボートや、2馬力を超える船外機を搭載する場合には船舶登録が必要で、小型船舶操縦免許が必要になります。湾内の穏やかな海でしか釣りをしないならば免許不要艇でも十分です。一方、外洋まで出て大物を狙いたい、という場合には高馬力の船外機が必要になりますし、大型のボートの方が安心ですから、操縦免許が必要なボートがオススメなのは言うまでもありません。




インフレ―タルボート(ゴムボート)

手漕ぎの小さなローボートから25馬力以上の大型船外機を搭載できる大型パワーボートまで、サイズも形状も様々なものが用意されています。有名なメーカーとしてはアキレス、ジョイクラフト、ゼファーボートなどがあります。

ゴムボートと言ってもその素材は純粋なゴムではなく、CMSと呼ばれるゴム素材をメインとした物やPVCと呼ばれる塩化ビニール製の物があります。CMSはアキレスが得意としている素材で、以前はハイパロンと呼ばれていました。適度に柔らかくて耐久性が高いのが特徴で、高価ですが長く使えます。PVCは各社が使用する現在の主流素材です。ジョイクラフトはほとんどすべてのインフレータブルボートにPVCを採用しています。アキレスは中級機種以下にPVCを用いています。PVCはその製法や生地によって強度がかなり変わります。CMSに比べれば堅いので、ボートを膨らませるとむしろ頑丈に感じます。原材料費が低く抑えられるために、比較的安価に製造できます。

ゴムボートというとお手軽な印象があるかもしれませんが、近年は原料費が高騰し、同サイズのカートップ用FRPボートよりも高額なケースもあるほどです。

インフレータブルボートの最大のメリットは小さく畳めるということ。フルサイズのボートでも畳めば大型スーツケース程度に納まります。カートップやトレーラブルは保管場所がない、という方には強い味方になります。インフレータブルボートはチューブそのものが浮力体ですから、水に浮かんだら絶対に沈みません。またよほどのことがない限り転覆もしません。海難事故の救助艇にインフレータブルボートが使われていることからもわかりますが、とても安全性に優れていて、うねりや波に対しても安全マージンが大きいボートです。一方でチューブが邪魔になってボートのサイズに対し人が乗れるスペースはとても狭いです。

インフレータブルボートならセダンでも運べる、などと紹介しているサイトもありますが、実際にはボートの他にドーリーや船外機、燃料タンクや洗浄用の水のタンク、艤装類やもちろん釣り道具にクーラーボックスなど、ボート釣りに必要な道具類は全て車載しなければなりませんから、実際には最低でもSUV、できればミニバンクラスの車が欲しいところです。

インフレ―タブルボートの欠点は、準備や片付けが大変だということです。狭い船内を補うために艤装をすることが多いのですが、あらかじめセットはできないために、現地ですべて組み立てることになります。当然ボートを膨らませるのも現地です。慣れればけっこう短縮されるとはいえ、満足できる艤装を施して釣りができる状態にするまで小一時間はかかると考えておいた方がいいでしょう。片付けはもっと厄介で、道具類やボートをすべて洗浄して乾燥させ、分解してボートを畳み、車に積み込むまでに最低でも1時間、しっかり丁寧にやればそれ以上かかります。

また、インフレータブルボートは意外に重いです。免許不要艇の最大サイズになると船体だけで50kgほどあります。これに9.8馬力の船外機をつけるとしましょう。この船外機が約40kgです。燃料が12リットルならば10㎏以上ありますね。つまり、道具類を一切乗せなくても100kgあるんです。氷を入れたクーラーボックスや、たくさんの釣り道具を入れた道具箱、けっこうバカにならないのが魚探などに用いるバッテリーの重さで数キロから10数キロまで。おそらくぐっちゃんの初代Gucchan号は、釣行時に120kgくらいはあったと思います。ドーリーがあるとはいえ砂浜の上を運んだり、車から降ろしたり車に積んだりするんです。一般的に砂浜の場合出航時は下りになりますが、帰航時は上りです。上りの砂浜で120kgのボートを引っ張り上げる、と想像してみてください。ゴムボート釣りは想像以上に体力が必要なんですね。

最後に、ゴムだけに穴が開くのが心配、という意見を多く聞きます。確かに牡蠣や藤壺が付いた岸壁にボートをたたきつければ穴が開くこともありますし、釣り針や魚のヒレがささって穴が開くこともあります。ただし、水遊び用の浮き輪のように簡単に穴は開きません。相当丈夫な素材でできているので、気を付けていればほとんど問題はありません。仮に穴が開いてもすぐに沈没することはありませんし、いくつかある気室の1つが完全に空気が抜けてしまっても、沈没しない構造になっています。めったに穴が開くことはありませんが、仮に空いたとしてもほとんどは簡単に修理キットで穴を防ぐことができます。長く使っていると小さな1日浮いていても気にならない程度の穴がいくつかある、というケースが見られますが、この辺りはインフレ―タルボートの宿命とも言えるでしょう。経験上インフレータブルボートが寿命を迎えるのは、重い船外機を支えるトランサム周りが劣化してボロボロになったり、ボート生地と生地を接着している接着面から空気が漏れ出すようになることが多いように思います。アキレスのCMS素材の物がインフレータブルボートでは一番長持ちすると思います。逆にオークションなどで販売されている激安ゴムボートは数回の釣行でトランサムボートが割れたなどという信じられない粗悪品もあるようですから、命を預けるボートを購入するという点からも、上記3メーカーのようなメジャーメーカーのボートを選択することをお勧めします。

 

カートップボート

その名の通り、車の屋根の上に乗せて運搬するのでカートップです。素材は問題ではありません。一般的にFRPボートをカートップすることが多いのですが、プラスチック製やゴムボートであっても、車の上に乗せて運搬すればカートップボートです。折りたたんだり分割できるボートならば車内に車載することが可能ですが、一体型のボートは長さが3m前後はありますから車内に入れるのは無理です。インフレ―タルボートでもボートを膨らませたまま運ぼうとしたら、カートップは選択肢のひとつです。ただ、ここではFRP製の一体型ボートを乗せることを前提に書きますね。

インフレータブルボートと違って毎回膨らませる作業は不要です。FRP製ならば洗浄もゴムボートよりは楽ですね。上の写真は大型ワンボックスにカートップ(仲間のあひさんのさぶろく丸です)ですが、比較的小さな軽自動車や軽トラックでもカートップは可能です。原則、ボートの幅が車よりも小さいこと、ボートの長さが車の長さの1.1倍以下であればカートップできます。ご覧のように車の屋根にさかさまにして乗せるのが一般的ですから、船外機は取り外して車の中に納めなければなりません。釣り道具も艤装も付けたままではカートップできませんので、すべて取り外す必要があります。トレーラブルボートの場合はサイズが車+トレーラーになるので運転が大変になりますが、カートップボートならそもそも車のサイズは変わりませんから、運転はトレーラブルほど気を使わなくても大丈夫です。

カートップ用のボートは車に乗せることを前提に作られていますから、FRP層が薄く、重量が軽くなるよう工夫されています。11フィートや13フィートのボートが50~60kgで存在します。同じ13フィートでもカートップボートであるパーフェクターは約50kg、トレーラブル専用艇であるNEO390は船体だけで210kgあります。いかにカートップボートが軽量に作られているかお分かりいただけるでしょう。ボートは重いほど海上で安定する傾向がありますので、軽いカートップ用ボートは海上での安定性がトレーラブルボートには劣ります。またインフレータブルボートはその構造上安定感は抜群ですから、この3者ではカートップボートが最も海上の安定性ではビハインドがあるということになります。さらに軽さを優先するため二重底自動排水のボートは少なく、ほとんどが一重底で自動排水ではありません。そのため、海上で波が打ち込む場合などは、入り込んだ海水を排水する工夫が必要です。

インフレータブルボートに比べて船内が広くゆったりしています。喫水が少なくボートの高さがあまりないので、海面から舷までの高さ(乾舷)が低く不安を感じることもありますが、よほどのことがない限り安定しています。和船形状のボートが多くシンプルな構造のため釣りがしやすい形状だと言えます。

カートップボートの欠点と言えば、意外に準備や片付けに時間がかかること、ボートを乗せると車が海水まみれになるので、車の塗装の劣化が早いことでしょう。もちろん重いボートを車の上に乗せるわけですから、それなりの体力が必要になります。

FRPボートはほとんど劣化しませんから、大切に使えばインフレ―タルボートよりもはるかに長持ちします。これはカートップだけでなくトレーラブルボートにも言えます。

下の写真はカートップボートの有名ブランド、エボシ340proでぐっちゃんの友人toshiさんの海俊丸です。このエボシは二重底なのでかなり重さがあり、340proは登録長も3mを超えていますのでカートップボートとしては最重量級と言えるでしょう。ちなみにtoshiさんはこの海俊丸に8年以上乗られた後に23フィートの係留艇にステップアップされました。



トレーラブルボート

トレーラーに乗せて、自動車で牽引して移動するボートをトレーラブルボートと言います。トレーラーで運べばインフレータブルボートだろうと分割ボートだろうとトレーラブルボートということになりますが、通常はカートップボートよりもワンランク大型のボートが多く、素材はほとんどFRPです。トレーラーはサイズや積載量によって「軽トレーラー」「小型トレーラー」「普通トレーラー」などがあり、搭載できるボートのサイズが変わります。

牽引免許なしで牽引可能なのは最大積載量750kg程度までで、牽引車の先端からボートの最後尾まで12m以下でなければなりません。また、牽引車もその重量によって牽引可能なサイズに制限を受けることがありますので、原則大きめの牽引車を用意する必要があります。

このような条件を考えると、通常トレーラブルに適するボートサイズは17フィート程度までということになります。もちろん、牽引免許を取得して20フィートを超えるボートを牽引する方も見えますが、日本の道路事情や出航場所事情、駐艇場事情を考えれると17フィートぐらいまでが現実的だと思います。トレーラブル専用ボートはカートップボートのように軽量化する必要がないためFRPの層が厚く丈夫です。車に乗せるわけではないので船体の高さを低く抑える必要がなく、結果として乾舷の高いボートを造れますし、軽量の敵である二重底もOKなので自動排水構造を持つ物がほとんどです。さらに突起物があっても問題がないため、センターコンソールなどをつけることも可能です。

トレーラブルボートのメリットは、他の可搬型ボートに比べ圧倒的に安定感のある船体であることと、それにともない高馬力の船外機を使用できるということです。速度も出ますし、波にも強いですから、移動能力も高く、他のボートよりも遠くのポイント、沖のポイントまで攻めることができます。そして準備や片付けはとても楽です。他のボートに比べ収納が多いので釣り道具を積みっぱなしで牽引ができますし、スロープがあればそこから降ろしてタックルをセットすれば準備完了です。片付けもスロープでトレーラーにボートを乗せてしまえば、そのまま帰宅も可能です。帰宅後に水道水でジャバジャバ水洗いすれば、大した手間もなく片付けが終了してしまいます。

トレーラブルボートのデメリットはというと、新艇価格で考えれば高価なことでしょうか。中古で安いボートを購入する手もありますが、この場合はメンテナンスに相当なお金がかかる覚悟が必要でしょう。船体価格、船外機の価格も高いのですが、それ以外にも様々なオプション品がいちいち高価です。さらにトレーラーや牽引するためのヒッチメンバーも必要です。海水に浸けるトレーラーはボート以上に傷みやすく、ボートよりもトレーラーのメンテナンスに手間がかかりますし、トレーラーは車両ですから車検や自賠責保険への加入も必要です。車1台分余分な駐艇スペースが必要ですし、可搬型ボートの中では一番の金食い虫ですね。次に注意すべきは運転です。トラックを運転しているようなものですから気軽にコンビニにも寄れませんし、牽引時は通常運転よりもはるかに気を使う必要があります。けん引車の燃費も2~3割は悪化すると思った方がいいでしょう。それらがすべてクリアされたとしても、最後に最大のデメリットが存在します。それは「出航場所が極端に少ない」ということです。関東地方ではトレーラブルボートを出せるゲレンデはほんのわずかです。24時間好きな海岸から出すことができるインフレータブルボート(それでも制約はありますが)に比べると、その行動範囲は出航場所という問題でかなり限定されてしまいます。トレーラブルボートを購入する計画がある方は、自分の行きたい海域に行くための出航場所が確保できるか十分に吟味する必要があるでしょう。


まとめ

保管場所と出航場所が確保できて、お金に余裕があるならばトレーラブルボートがオススメです。逆にそれがネックになってトレーラブルボートは少数派なのだと思います。

通常はインフレータブルボートか小型のカートップボートからスタートするのが良いでしょう。理由はいろいろな場所から出航できるからです。いろいろな海でいろいろな釣りを試して、自分の目指すべき釣りが決まったら、それが実現できるホームグランドが決まりますよね。そこがトレーラブルボートの使用できる場所であればステップアップするのも悪くないと思います。

個人的にはカートップボート用のパーフェクターやエボシといったブランド物のボートを、船底やトランサムを強化してトレーラブル化するのがいいように思います。カートップボートはFRPが薄いので、トレーラーで牽引すると振動と衝撃で船底やトランサムが割れたりすることがあります。そのためトレーラブルにするには船体の強化が不可欠です。

上の写真はぐっちゃんの友人、ビル・ジャックさんの海信丸です。パーフェクター13というベストセラーカートップボートですが、船底やトランサムを強化してトレーラブル仕様にしています。これならばドーリーも使えますから砂浜からのエントリーも可能ですし、トレーラブル専用艇ほどではないものの、とても安定感のあるボートですから少々沖に行っても安心です。さすがに売れているボートはそれなりに理由がある、というわけですが、このパーフェクターというボート、カートップボートとしては尋常じゃなく高額です。中古でもかなり高値で取引されています。大型ボートは買い手がなかなかつかないので中古艇はものすごく安価になる傾向がありますが、この13フィートくらいのボートは人気があって値崩れが少ないです。特にカートップボートの雄であるパーフェクターはオークションでも常に人気があって高額で取引されています。

いずれにしろ投資が少なく保管場所に困らないボートから初めて、徐々にグレードアップするという人がほとんどです。ボート釣りは楽しい反面かなり体力を使いますから、実際に体験してみて、一生続けられる遊びだとわかってからステップアップするのがいいのではないでしょうか。

マイボート釣りのうんちく記録簿  ~進め!Gucchan号!公式ホームページ~

房総半島をメインフィールドにマイボートで大物を追い求める、誰が呼んだか「房総のジャイアン」ことぐっちゃんがお送りするボート釣りホームページです。

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